Ren Design Studio

COLUMN

Ren Design Studio Webサイトで使用している線のイラストの原点

それは10代の頃に遡る。

当時通っていた美術大学受験のための美術予備校で「形どり」という時間があったのだ。
藝大受験に必ず登場する石膏デッサンを描くための練習の一環だった。鉛筆や木炭でデッサンをする、というと普通は影を一生懸命描き写してしまう人が多い。
しかし影は、光の方向や強さ、質感が変わるとそれに伴い変化してしまう。そこで「形どり」という練習が登場する。光と陰に関係なく、鉛筆(もしくは木炭)の線で「形の変わりめを追いかける」のだ。
実際に石膏に触っている気持ちで追いかける。
最初は「形の変わりめ」というのがどこなのか、何なのかわからなかったが、描いているうちに「ここかも?」という箇所が感じられてくる。
そう思った場所を鉛筆で追いかけていくと、形が浮かび上がってくるのだ。
影を描くだけでは、影の中に埋もれてしまって同じような色に見えている箇所も、ちゃんと形どりでは表現されるし、見ただけではどのようになっているのか分からないときは実際に触ったりもする。
当時の私にとって、それは今までしたことのない描き方、物の見方で新鮮だった。
線だけで2次元に立体が浮かび上がる。線を描いた人の視線の軌跡が画面に表現される。その線を淘汰し、最小限にしたのがサイトに使用しているようなイラストの始まり。

2次元にしか存在しない3次元の世界が私の心をとらえる。

2020年1月15日
文 : 佐武絵里子

石膏デッサンを描くための練習の一環「形どり」

形どりの線を淘汰しシンプルにした